手編みニットが伝える「想い」

こんにちは、hus編集チームの倉内です。

みなさんは手編みのニットを誰かに贈ったことはありますか?

手編みニットには編む人の「想い」が込められているように感じます。

大切な人への贈り物として選ぶ人が多いのも、一目一目を重ねていくという工程が「想い」の積み重ねを連想させるからではないでしょうか?

恋人が身につけるものを編む、生まれてくる赤ちゃんに靴下を編む、セレモニードレスを編むなど、大切な「想い」を込めて編むことも多い編み物。

今回は、贈り物としてのニットにまつわるお話をご紹介いたします。

 

手編みのプレゼント、何を贈る?

[hus:]のYouTubeで募集した「みんなに聞いた!手編みのプレゼント」で、贈ったものとして多くの声が寄せられたのは「マフラー」でした。

使ってもらえるし、シンプルなデザインなら初心者でも編めるから、マフラーはプレゼントしやすいですよね。

「中学校の時につきあっていた彼に手編みのマフラーをあげたけど、使ってもらっているのを見たことがなく、お別れしてしまった」というちょっと切ないエピソードもありました。

でも「でも彼を思いながら、喜んでくれるといいな、と思いながら編んでた時間は楽しかった」そうです。

もちろん喜んでもらえたらとっても嬉しいですが、そうでなくても「好きな人のために一生懸命になった時間」はかけがえのないものですよね。

「編みすぎて長さ3mのマフラーになりました」というかわいいエピソードもありました。

編み始めは慎重に編むのだけれど、 慣れてくると調子が上がって気がついたら長くなっていた!ということ、編みものをしているとよくありますよね。

夢中になって編んでいる姿が目に浮かびます。

3mのマフラー、彼と一緒に巻いて温まったりしたのでしょうか?

手編みのプレゼントは、いつまでも忘れられない思い出をもたらしてくれます。

 

手編みニットを贈る相手は、今も昔も「好きな人」

手編みのニットに大好きない人への「想い」を込めるというエピソードは世界共通です。

中でも印象的だった、2つのニットの誕生ストーリーをご紹介したいと思います。

 

【極寒の地で戦う愛する人のために誕生した「バラクラバ」】

「バラクラバ」は目の部分を残して頭、顔、首の全体を覆う防寒具です。

これまでもスキーなどのウィンタースポーツをするときに使用する人はいましたが、「LOUIS VUITTON」や「MIU MIU」などのハイブランドのコレクションで取り入れられたことがきっかけで2022-23秋冬のトレンドとなりました。

バラクラバの名称の由来は、現在のウクライナ周辺、クリミア半島にある地名です。

1854年に勃発したイギリス軍とロシア軍が戦った「バラクラバの戦い」のとき、イギリス軍の兵士が東ヨーロッパの寒冷な気候でも耐えられるように被った手編みのウール帽(ニット帽)がバラクラバの起源だそう。

極寒の戦地に出兵する夫に少しでも暖かく過ごして欲しいと願う妻たちが編んだのが、顔ごと覆うことができるニット帽。

バラクラバは「必ず無事に帰ってきて欲しい」という願いを込めて編まれた、ニット作品だったんですね。

 

【どんな時も大切な人の姿を確認したい「アランセーター」】

日本でも人気のあるアランセーター。

伝統のある模様の組み合わせは素朴なのに、どこか凛とした美しさを感じます。

アランセーターはアイルランド本土西側に位置するアラン諸島で編まれていました。

大西洋に囲まれた島には日常的に強風が吹いて波は荒く、漁師たちにとって厳しい環境。

そんな状況で船を出す息子や夫を寒さや濡れから守るために、1000年も前から島の女性たちが編み始めたセーターが、アランセーターの発祥と言われています。

羊毛の油脂分が海水から男たちを守り、太い毛糸で編まれているので分厚く風を通さないため、保温機能にも優れたアランセーター。

アランニットの模様はケーブル(網)、ハニカム(蜂の巣)、ツリーオブライフ(生命の木)など漁師たちの生活にかかわるものがモチーフになっています。

さまざまな意味を込められて作られた模様は、家庭によって少しずつ異なる柄は代々引き継がれ、家紋のような役割をしていていました。

漁師たちが不幸にも遭難してしまったときに、そのセーターの模様によって誰であるかを判断していた、という伝説があります。

命を懸けて海に出る島の人々にとって、豊漁と無事は切実な祈りだったことでしょう。

その想いを形にしたのが、手編みのセーターだったのですね。

 

家族のために編むニット

[hus:]のYouTubeでは「家族にプレゼントした」という声も寄せられました。

恋人に贈るのと違い細かく確認できるせいか、小物だけではなくベストなどのウェアにチャレンジする人もいました。

また家族みんなで使えるブランケットなどの大物を編む人も多いようです。

家族のために編むニットは、毎日の笑顔と共にある素敵な宝物のようなアイテムになりますね。

 

悲劇の王妃の心を癒した編みもの

ルイ16世の王妃であり、フランス革命でギロチン台の露に消えたマリー・アントワネット

ぜいたくな生活ばかりがクローズアップされるマリー・アントワネットですが、手芸を愛する一人の母親でもありました。

マリー・アントワネットが家族と引き離されて一人監獄へ収容されたとき、編んでいたのは息子の靴下だったそうです。

再び、家族に会い、靴下を手渡す日を信じながら、編んでいたのかもしれませんね。

 

プレゼントされた手編みニットを使わない理由

プレゼントされた手編みのニットを使ってもらえなくて、ちょっぴり寂しい思いをした経験はありませんか?

「どうして使わないの?」という質問の答えのひとつにあったのが「もったいなくて」でした。

そんな手の込んだものを汚してしまったり、使い古してしまったりするのが残念で使えないということなのでしょう。

その気持ちもすごくよく分かりますが、せっかくですからぜひ、使ってほしいですね。

 

大切な人を守る手編みニット

手編みのニットは、想いをつなげる手紙のような存在です。

このニットが大切な人を寒さから守りますように、満ち足りた気持ちになれますように。

そんなことを思いながら、一目一目を重ねます。

また、自分のために編むという場合には、自分へのエールがあるのではないかと思います。

さまざまな想いを詰め込んで、大切な人の手にわたっていく手編みのニット。

次はどんな想いを込めて編みたいですか?

(おわり)