ニッターさんの暮らし「編みもの作家さん -macaroniさん(後編)」

かぎ針編みの小物とあみぐるみをメインに編み物作家として活動されているmacaroni(マカロニ)さん。

前編では、楽しいことも悩んだこともたくさんあった、これまでの作家活動について伺いました。

続く後編では、macaroniさんがこれまで編んできた、かわいい手編み作品を見させていただきます。

 

服を選べるあみぐるみのキーホルダー

macaroniさんと言えば、のくまぴろ作品。

着せ替えできるキーホルダーやウェディングドールたちは、ついつい手が伸びちゃうかわいさです。

『ふわふわの体と、刺しゅうのおめめ、優しい色合いの世界観』。macaroniさんがこれまで大事にされていた世界観に癒されていくのを感じます。

macaroniさん:

「対面イベント限定で販売していたお洋服や帽子が選べる『くまぴろ』と『うさぽん』のあみぐるみキーホルダー。

私自身着せ替え人形が好きで、こういうものがあったらいいなということで形にしたものです。

季節に合わせて、夏は麦わら帽子にワンピース、冬はもこもこのポンチョを着せて…と衣装もあれこれ考えながら作るのも楽しくてお気に入りの作品たちです。

イベントで実際に手に取って選んでその場で仕上げるので、お客さんといっしょに悩む時間も思い出です。」

▲着せ替えできるくまぴろキーホルダー
▲うさぽん。お洋服や帽子がとってもかわいい

「結婚式のウェルカムドールとして友達に編んだくまぴろカップルたち。

それぞれ挙式やドレスのイメージに合わせて作らせてもらいました。

洋裁は得意ではないので試行錯誤しながらドレスも作りましたが、喜んでもらえてよかった。

人生の大きなイベントのお手伝いができてすごく光栄な作品たちです。」

 

自分の結婚式にも、手編みアイテムを。

ご自身の結婚式に、手編み作品を用意する方も多いそう。

最近では、ご両親に用意してもらったレース編みのベールを使う方も多いのだとか。

macaroniさんも、ご自身の結婚式で、手編みのアイテムを用意しました。

macaroniさん:

「自分の結婚式にも、張り切って手編みアイテムを用意しました!

まずはウェルカムドール。

くまぴろカップルと新郎新婦の似顔絵あみぐるみです。」

「くまぴろたちの体の色は定番のホワイトとブラウンで、衣装はザ・ウエディングな白基調の物を着せました。

似顔絵あみぐるみの方はSNSでこういうウエディングドールを作られている方を見て、自分なりに編んでみたものなんですが、正直すごく似てます(笑)!

眉毛と口は編んで表現するのが難しくてフェルトを切って貼ったのですが、そのおかげでかなりそれっぽくなったかな、と思っています。

結婚式にはレース糸でベールにエッジングしたものも作りました。」

「人生に一度の大イベント。

私の一番大事な手編みのものを身に付けたい!と思って調べてみると、総レース編みのベールはあったのですが、なかなかそれは根気がいりそうで。

以前ハンカチに素敵な縁飾りを編んだものを見たことを思いだし、これをベールの裾にあしらったら可愛いし、そんなに大変じゃなさそう!と思い作ってみたもので。

ベール自体も手芸屋さんでチュール生地を買ってきて作り、そこに縁編みを施しました。

写真ではわかりにくいのですが、ビーズも通してあって本物はキラキラとしていてすごく素敵に見える気がしています…。

編み方は、手持ちの本の何かの縁編みをアレンジしたのですが、一体何だったのか覚えておらず、もう2度と再現できないかもしれないです(笑)。

そしてもう1つ、身につけるものでグローブも編みました。」

「こちらもビーズを編み込んで、レースの繊細さとキラキラとでウェディングらしいものになったなと大満足の作品です。

元々グローブはレースで編みたいと思っていて、でもなかなかパターンが見つからず。

自分で考えようと思ったのですが、指ありのものはかなり難易度が高そうで…。

色々調べているうちにこういうタイプのフィンガーレスグローブなら編めそう!と思い出来上がったものです。

オリジナルパターンですが、モチーフを3つ繋げて、なんとなく手首のところを編み、中指を入れるリングをビーズで作ってグローブにしています。

適当に編んで一発でいい感じにできたことを覚えています(笑)。」

 

妊娠中に編み始めたベビーアイテム

お母さんになったとき。我が子にベビー用作品を編んでみたい、と思ったことがある方は多いはず。

macaroniさんも、妊娠中に少しずつ編んだベビードレスを編んでいたようです。

macaroniさん:

「日本ヴォーグ社出版「手編みのベビーニットベストセレクション」から選んだ手編みのドレス。

 

本に載っていたベビードレスの3パターンの中からどれにしようか悩んだ末に、一番甘さ控えめの可愛すぎないデザインのものにしました。

赤ちゃんのものだし小さいからすぐ編めるでしょ!とたかをくくっていたのですが、ベビードレスって足の先まですっぽり覆うように丈が長くて、なかなか編み終わりませんでした…。」

▲妊娠中に編んだベビードレス

「友達の赤ちゃんに会いに行った時にお家で見たベビージム。

『ベビージムにあみぐるみのおもちゃを吊るしたものを作りたいな』と思っていたので、自分の時に作ったのですが、すごく気に入っています。」

「土台のジムは作られている方のインスタグラムやYouTubeを参考にフラフープを使って作りました。手編みのおもちゃたちはオリジナルパターンです。

赤ちゃんが見上げるものだからお空にあるものがいいかな、ということで星雲太陽に風船を編んで作りました。

それぞれ『太陽は押し笛を入れてぷーぷーと鳴る』とか『風船の中にはシャカシャカなるものを』とか考えて工夫をして作り上げたのですが、実際息子が赤ちゃんの時には大活躍で、作って良かったベビーアイテムナンバーワンです。

簡単な編み図などを私のYouTubeで公開しています。」

「[hus:]さんでキットにしていただいたキッズパンツ。これは2023年一番の傑作でした(笑)。

元々お尻に動物とかワッペンしてあるデザインのこういうパンツを持っていて、可愛くて使いやすいよね、と思っていて。

bio(キッズパンツの使用糸)のスワッチを編んだ時に、ふんわり柔らか肌触りで、かぎ針で編むと結構しっかりする。

『肌に触れるものでしっかり編み地が使えるもの…そうだパンツ編もう!』ということで作り出したものです。

手持ちのパンツを見てサイズ感やお尻のワッペンの大きさを決めて、丸いところのカーブは目をシパシパさせながら製図をして、なんとか形にできました。

実際息子に履かせて問題なく使えることも確認できて、無事にキットになり、時間をかけていたので本当に良かったとホッとしました。

パンツをデザインしたのは初めてでしたが、私らしいくまさんの要素を入れつつ、可愛いくて使えるものができて、心に残った作品です。」

「日本文芸社出版「デイリー&アニバーサリーのベビーニットこもの」にデザイン提供させてもらったファーストクラウン&ティアラもすごく気に入っています。

手編みのクラウン、レースで編むことで華やかで繊細にデザインしました。」

「細かくて編むのは根気がいるし、編み図起こしていただくのも大変だったとは思うのですが、でもでも可愛いんです。

息子の誕生日に合わせて本のものと色違いで編んで、記念写真を撮ったのですが、記念日にぴったりの装いになったなと思っています。

これは二重の意味で親バカかもしれませんが…(笑)。」

 

macaroniさんに3つのことを聞いてみました。

嬉しさも悩みもあった、macaroniさんの編み物人生。

取材の最後に、macaroniさんに3つの問いかけをしてみました。

1つ目の問いかけは『編み物を始めたきっかけや、編み物をする理由は何ですか?』

macaroniさん:

「編み物を始めたきっかけは、祖母がやっていたのを見て興味を持ったから。子供の頃に教えてもらって、大学生の時に沼にハマりました。

その頃から、編み物に限らずハンドクラフト全般が好きで、刺繍、レジン、水彩画、フェイクスイーツ、ペーパークラフトなどなど色々やっていました。全部楽しくて大好きで時間があればやりたいな、と思っています。

あとは『旅行に行ったらご当地の陶芸やガラスに染め物、なんでも体験したい!』とか、『好きな科目は図画工作!』とか、とにかく作ることが大好き。」

「そんな私が他の手芸じゃなく編み物がイチオシな理由はズバリ、『電車でできるから』。

通学時間が長かった大学時代、持て余しがちな電車で編み物をする時間が大好きで、いつまでも電車に乗れると思っていました。

編み物って小さな毛糸玉とかぎ針1本でどこでもできて、なんて素晴らしい手芸なんだ…!と気づいた時に私の編み物人生が始まったといっても過言ではないです(笑)。

編み物をする理由は、好きだからとか気持ちが安らぐとか色々あるんですけど、一番はやっぱり「どこでもできて手軽だから」なのかもしれないです。」

▲大学生の頃に電車で編んでいたあみぐるみたち。今手元に残っている子だけでたくさんいました。

2つ目の問いかけは『編み物時間は、どんな時間ですか?』

macaroniさん:

「200段くらいある長いマフラーを編んだりしていると、最初20段くらい編んだところで『えっまだ全体の10分の1?!先が長すぎる…』といつも絶望するんです。

でも半分過ぎたくらいから完成まで、すごく編み針が乗るというか、あっという間に編み進んで出来上がってしまって、この感覚がたまらなく好きなんです。

どんどん編んでいたら、体感5分くらいで2時間経ってる、みたいな。

すごく集中していて疲れてるはずなのになんだか気持ちいい高揚感がする、これがニッターズハイというやつでしょうか…。

編み物をしている時間は、この高揚感とか達成感を味わうための楽しい楽しい時間なのかなと思います。」

最後の問いかけは、『macaroniさんにとって編み物とは?』

macaroniさん:

「私にとって、編み物には2つの側面があります。

1つは”仕事”です。

こういう言い方をすると味気ないし義務的に聞こえるかもしれません。

でも、私はニットや服飾の専門学校を出たわけでもなく、趣味から始めて、好きで好きで続けてきた編み物を仕事にできている。

普通に外に出て雇われて働く方が良いこともたくさんあるけれど、『私は今大好きな編み物を仕事にしてるんだぞ!』と思うことで、作品作りを妥協せずに頑張れているし、歩み続けていられるのかなと思います。

もう1つは、”生涯をかけて挑戦したいこと”。

棒針編みは初心者なので、これからゆっくりでも練習をして手編みのセーターとか靴下を編んでみたいなと思っています。

あとはアフガン編みもやってみたいし、モチーフつなぎで大きなこたつカバーを編んでみたいな。」

もちろん作家活動の中で成し遂げたい夢もあります。

時間はかかるだろうから全部いつか、というゆるい気持ちですが、いくつになってもやっていたくて、かっこよく『生涯をかけて挑戦したいこと』なんて表現してみました。

こうして振り返ってみると本当にいろいろ編んでいて、改めて編み物の魅力に取り憑かれているなあ、と思いました。

この先も今までの何倍もたくさんのものを編んで、編み物をいっぱい楽しみます!

 

ここまで読んで下さった方、このような機会を作ってくださった[hus:]さん、本当にありがとうございました。