ニッターさんの暮らし「編みもの作家 -川瀬さん(uzu.さん)」

誰しも、編み物のペースはさまざま。

1ヶ月に数回お気に入りの針と毛糸に触れるだけの人もいれば、毎日何時間も編み物に熱中している人もいます。

中には、家族でテレビを見ながら、子供の宿題を見ながら、寝る前に一息つくのに..と、日常の要所要所で編み物が登場する人も。

そんな編み物は、単なる趣味ではなく、『暮らし』の一部。

今回お話を聞かせていただいた、編み物作家の川瀬さん(uzu.さん)は、暮らしの中心に編み物があると話します。

 

編み物が、暮らしの中心

生活の中心が編み物になっている川瀬さん。息子さんは大学生、ご主人は勤務地の都合で週末にしか帰らないため、平日はほぼ1人の時間です。

編みたい時に編みたいだけ編める、ありがたい環境だと語っています。

川瀬さん:
「編み物作家としてのお仕事もいただく事が増えたので、いよいよ編み物が中心の生活になっています。

メールチェックやDMのチェック、インスタコメント返し。オンライン講座の質問返し。こういう事をしながら毎日編んでます。

集中すると、何時間も時間を忘れて編んでしまうこともあります。制限がないと、ついついやめられなくなってしまって…。なるべく休憩をしながら、合間に最低限の家事をしながら、いつも何かしら編んでいます(笑)。

生活リズムとしてはダメダメなんです。ルーティン的な物もないですし、リズムもなくて…。早寝早起きが苦手で、夜型だし、ただ編む事しかできない日もあるくらいです。」

 

編み物をはじめたのは、主人と母のおかげ

川瀬さんには、子育てと仕事の両立が上手くいかず、気づかないうちに心が疲れきってしまった時期がありました。

異変を自覚したのは、身体に色んな不調が現れてきてから。気づいたら仕事にも行けなくなってしまって、その時期は家でボーッとすることしかできない状態だったそうです。

そんなときに『編み物との出会い』がありました。

川瀬さん:
「ある日、主人の会社でクリスマスリースを作るワークショップがあって、その材料の残りを持ち帰ってきたんです。そのときに『リース作ってみたら?』と言われて、何気なくやってみたんです。

そしたら、リース台に飾りを付けるだけの簡単な作業なのに、久しぶりに心が落ち着いて癒されていることに気づきました。

そのことを母に話したら、『何か編んでみたら?』と言われて、すぐに1冊の編み物本といろんな色の毛糸を渡されました。」

「私が小さい頃、母はよく編み物をしていて、私はそばから見ていました。たまに母に教えてもらって簡単な物を編むぐらいで、何かを完成させた事はなかったです。『仕上げはお母さん~♪』といった感じでした(笑)。

ただ、編み物は割と身近にあったんですよね。

私が小学生の頃、よく近所の手芸屋さんに行く母に付いて行って、編み物を教わっている母を見ていました。その雰囲気は今でも覚えていて、なぜか好きな光景だったな…。」

「母に何か編んでみたら?って言われた時、素直に編んでみよう!ってすぐ思えたんです。母には『明るい色で好きな花を編みなさい』とだけ言われました。

それから、毎日、毎日、同じお花のモチーフをひたすら編み続けたんです。不思議と編んでる時は何も考えず集中できて、とても心が落ち着いていく感覚がありました。

毛糸の質感や色、編んでいる時間、出来上がった時の達成感。どれも私を救ってくれました。それが私が編み物を始めたきっかけです。」

 

毛糸は『収納』せず、飾って暮らす

リビングで編むことがほとんどだという川瀬さん。

ダイニングテーブルが編み物の作業台になっており、いつも編みかけや毛糸が散らかっている。ただ、そんな空間が心地よいのだと語っています。

川瀬さん:
「ダイニングテーブルからベランダのグリーンが見えるので、それを見ながら編むのがお気に入りです。

ダイニングテーブル以外だと、ソファの上や、ローテーブルで床に座って編むこともあります。

あぐらが楽なので、椅子の上でもソファの上でもあぐらをかいて編んでいる事が多いです。」

「私の作品は小物がほとんどなので、飾って楽しんでいます。

元々、インテリア雑貨が大好きなので、編んだ作品もお家のインテリアの一部になっています。いつも目につく所に飾って、眺めて愛でて楽しんでいます。

毛糸も見せる収納と言う感じにして、いくつか飾っています。見てるだけで幸せなので。」

「あとは、リビングのキャビネットの中。かご収納。季節的にすぐ使わない物や、余ってしまってる毛糸。持ってるだけで満足な物は布団袋に入れて収納しています。

ちょっと引かれるぐらい(お店ができるぐらい..?)の量あります。それでも、また欲しくなるので不思議ですよね。ひつじさんに取り憑かれているのでしょう(笑)。」

▲ダイニングテーブルから見えるベランダのグリーン
▲ダイニングテーブルにもプレイスマット
▲いろんな色のクッションカバー

何となく編み始めて解く。でも、その時間すら好き

最近になって、毛糸をオンラインで購入する人が増えています。川瀬さんもその一人のよう。

手芸屋さんが減ってきているのは寂しいですが、『オンラインが充実した』というのも、『編み物の楽しみ方が1つ増えた』と言えるかもしれません。

ただ、普段オンラインで買うようになったからこそ、実際にお店にいくと前より一層魅力的に感じてしまうようです。

川瀬さん:
たまに毛糸が並んでいるお店に行くと、棚ごと欲しくなってしまいます。毛糸は見てるだけでもいい。眺めてるだけで嬉しくなる物です。毛糸って可愛いですよね?

玉巻きも、カセでも、コーンでも並んでるだけで可愛い。色の力もありますよね。いろんなキレイな色を見ていると元気になります。

しかも触るとふわふわの毛糸なんて、癒ししかないです。」

最近購入したのは、ペーパーヤーンとコットン糸。これから夏に向かうのでバックや夏らしい作品を編みたいなぁと思い購入しました。

いつも、いくつかの作品を同時に編み進めていて、編みかけだらけです。今はコットン糸でモチーフブランケット、ペーパーヤーンでマルシェバック、レース糸でキャミソールを編んでいます。

完成するかはわかりませんが、楽しいです。

私は、何となく編み始めてしまうことがほとんどなので、『あ~ちがうな』『あ~目数合わない』って感じで、解いてる時間も編んでいる時間と同じくらいあります。でも、その時間すら好きです。

皆さんが嫌いな糸始末も好きなんです。なぜだかわからないけど、からまった毛糸を解く作業も好きで、6時間ずっと絡まった糸と格闘していたこともあります。知恵の輪をやっている気分でした(笑)。

いつもそんな感じで毛糸と遊んでいます。」

「そんな私をいつも近くで見ている息子なので、息子が小学生の頃に描いた作品に、『からまりそうでからまない糸』と言うのがあります。

あと、『”編”という字を使って文章を作る問題』があったときにも、息子は迷わず『コースターを編む』って書いていて、笑った覚えがあります。『そこはセーターとかマフラーだよね?』と思ったけど、その頃の私はひたすらコースターを編んでいたんです。

そのコースターが『花びらコースター』で私の編み物作家としての始まりでした。」

 

私にとって編み物は、モヤモヤをなくしてくれるもの

とにかく編んでいる時間が癒しだと語る川瀬さん。同じ動作を繰り返していると瞑想効果もあるのか、眠くなる事もあるそうです。

だから、いつも何かしら編んでいたい。それが何にならなくてもいいから、とにかく編んでいたい。川瀬さんにとって、編み物は『暮らし』の一部のようです。

川瀬さん:
「作品になると嬉しいけど、編んでる過程がやっぱり好きです。

私は計算が苦手なんです。よく『編み物は理系』と言われますが、私は全く違うタイプで…。適当に編み始めてしまうので目数が合わないことも多々あります(笑)。

それでも編み物ってもっと気楽で良いと思っていて…『ぜったいこうでないと!』は嫌いです。

ちょっと歪んでいても、目数をごまかしても、自分で編んだ物は愛おしいんです。言い訳ですが…計算できなくても、編めます!

こんな人もいるよー。もっと気楽に編んでね!楽しいよ!って伝わればいいなぁ。」

(おわり)