冬が過ぎて、日差しが少しずつ強くなってくると、編み物から遠ざかってしまうことがあります。
「なんとなく、冬のものって感じがするから」
「汗ばむ季節に毛糸なんて」
そう言って、かごの奥にしまい込まれた糸たち。
でも、ほんとうは、編むことに季節なんて関係ないのかもしれません。
手を動かすだけで、気持ちが少し整う。
あの感じは、冬だって、春だって夏だって、きっと同じです。
「何を編もう」じゃなくて、「少しだけ、編んでみよう」。
一段だけでも、ひと目だけでも。
そうやって編み始めたら、不思議と心が少し軽くなることがあります。
冷たい飲み物を用意して、風が通る場所で。
お気に入りの糸をひと玉、そっと取り出して。
肩の力を抜いて、ゆっくりと目を重ねていく。
そんな春の時間を過ごすのも、案外悪くありません。
編まない春もきっとある。
でも、もしまた少しだけ手を動かしたくなったら、編み物はいつでもそっと寄り添ってくれます。
【お知らせ】GW FESTA 2025 ~手編みではじめる、夏じたく~ 開催中!
毎年楽しみにしているゴールデンウィークには、ワクワクがたっぷり。
家族や友人と過ごす時間をあれこれ計画していると、それだけで気分も明るくなってきますよね。
せっかくの連休だからこそ、自分らしくとことん楽しみたい。
[hus:]では、そんな気分にぴったりの新作キットと新作糸をご用意して、 『[hus:] GW FESTA 2025』を開催いたします!
「どれを編もうかな?」と選ぶ時間にも、この季節だからこその手編みの楽しさを感じていただけたら嬉しいです。
フェアの開催期間は、4月26日〜5月6日までの11日間。
連休中のお買いものがもっと楽しくなりますように、という想いを込めた特典もご用意しています。
ぜひこの機会に、とっておきの新作キットや新作糸を手に取ってみてくださいね。
こころのざわめきを、ほどく時間
なんとなく心がざわついて、落ち着かない日。
誰かの言葉が引っかかったり、やるべきことが積み重なったり。理由ははっきりしなくても、気持ちが乱れてしまうことってありますよね。
そんなとき、わたしはそっと糸を手に取ります。コットンのやさしい手ざわり、目を重ねるリズム、少しずつ形になっていく安心感。
編むことに集中しているうちに、頭の中のノイズが静かになっていくのです。
編み物は、完成を急がなくてもいい。
ただ、ひと目ずつ進めていくだけでいい。その時間が、心の絡まりをゆっくりほどいてくれます。
ざわつく心を無理に整えようとしなくても、ただ手を動かすだけで、少しだけ気持ちがやわらかくなる。
そんな春の午後があってもいいのかもしれません。
糸を選ぶ、わたしを見つめる。
春は、何かを始めたくなる季節。
でも同時に、どこか不安で、気持ちが定まらないこともあります。
そんなとき、ふと立ち寄った毛糸屋さんで、「今のわたし」が選んだ糸を見て驚くことがあります。
あんなに落ち着いた色ばかりを選んでいたのに、今日はやわらかな黄色を手に取っていた。
いつもはウールばかりなのに、コットンやリネンの軽さが心地よく感じる。
それはきっと、気づかないうちに、わたしの気持ちが春に向かって動いているから。
糸を選ぶとき、私たちは“今の自分”と対話しているのかもしれません。
何色を身につけたいのか、どんな肌ざわりに包まれたいのか。
そこには、誰のためでもない「わたしのための選択」があります。
春は、何かを決めることが少し怖くなる季節でもあります。
でもまずは、小さな選択から始めてみませんか。
たとえば、ひとつの糸を選ぶことから。
「この糸を編みたい」と思えたとき、もうすでに、自分が進みたい方向が見えているのかもしれません。
「ちゃんとやらなきゃ」を手放せる時間
何かを作り上げようとしなくてもいい日があってもいい。
完成しなくても、きれいにできなくても、ぜんぜん構わない。
ただ、手を動かしていたい日ってありますよね。
春は、外の景色がどんどん変わっていく季節。
気温や光、人の気配。
そんな外のにぎやかさに、心が少しついていけないときもあります。
でも、だからこそ。
編み物のような、ただ“目の前のこと”に集中できる時間がありがたい。
テレビをつけたまま、好きなお茶を飲みながら。
数段編んで、ほどいて、また編んで。
何も考えずに、ただ手を動かしていると、気づけば心の中に静かな場所が広がっていく。
「ちゃんとやらなきゃ」を手放せる時間。
それが、編み物のすごさなのかもしれません。
忙しい毎日の中にも、なにも生み出さない日があっていい。
なにかを頑張らない日も、あなたにとって必要な一日です。
一段ずつ、少しずつ。
春は、世界がざわざわと動き出す季節。
新しい仕事、出会い、環境の変化。
世の中が忙しなく進んでいくなかで、自分だけが立ち止まっているように感じることがあります。
「もっと編めたらいいのに」
「時間があれば進められるのに」
そう思う日もあるけれど、そんなときほど、思い出したい言葉があります。
“一段ずつでも、ちゃんと編めている。”
大きな作品も、小さな一歩の積み重ね。
一段編んだだけでも、それは確かに前に進んだ証です。
人と比べる必要はありません。
季節のスピードに合わせなくてもいい。
たとえ編みかけが続いたとしても、何日も触れなかったとしても、また今日の一段がつながっていく。
春の陽気な空気にちょっと疲れたら、ゆっくり、自分のペースで。
“少しずつ進んでいるわたし”が、誇らしくなる時間に。
編み地のなかに、積み重ねた日々を見る
完成したばかりの作品を、膝の上にぽんと置く。
まだ少しあたたかくて、やわらかくて。
そこにあるのは、単に編みあがったものではなく「時の積み重ね」そのものです。
どこか慌ただしかった日々。
やる気が出なかったあの日。
眠い目をこすりながら、ちょっとだけ編んだ夜。
全部が、このひとつに編み込まれている気がして、思わずつぶやくのです。
「ああ、編んでよかったなあ」って。
上手にできたかどうかは、実はもうどうでもよくて。
きれいに仕上がったかどうかも、あまり気にならない。
ただ、自分の手で編んだという、その事実だけが、じんわりと心をあたためてくれるのです。
春の午後。
差し込む光のなかで、それを膝にのせて眺めるだけの時間。
何も飾らなくても、何も急がなくても、ちゃんと「いい時間」を過ごせたんだと気づく瞬間。
そんな気持ちに出会える日が、また来ると思うと——
「また、次のひと目を編みたいな」と、自然に思えるのです。
編むことで、今ここにいる
頭の中がざわざわしているとき、
これからの予定ばかりが気になって、今この瞬間にちゃんと立てていない気がするとき。
そんなときこそ、わたしは編み物を手に取ります。
ひと目、またひと目。
ただそれだけに集中していると、不思議なことに、心がいま“ここ”に戻ってくる。
編み物は、過去を悔やむこともなければ、未来を焦ることもありません。
ただ、今のわたしの手と目と心が、まっすぐにつながっている。
その感覚が、とても静かで、とても安心できるのです。
“編むこと”は、“今ここにいること”。
何かに振り回されそうになったら、また糸を手にして、深呼吸するように、ひと目ひと目を重ねていけばいい。
季節が変わっても、気持ちが揺らいでも、わたしはいつでもここに戻ってこられる。
編み物が、そう教えてくれるのです。
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