編み物の著作権|著作権侵害にならない範囲はどこまで?実際の裁判事例も解説

編み物は、著作権とは切っても切れない関係にあります。編み図をSNSで配信したり、編み図を購入して作品を作って販売することは許されるのか気になる人も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、編み物作家やハンドメイド作家の方に向けて、著作権の基礎知識から実際の裁判事例ともなっているトラブル事例まで詳しく解説します。編み物を楽しみながら、安心して作品作りや情報発信をしたい方は、ぜひ最後までご一読ください。

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そもそも著作権とは

著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義され、文芸、学術、美術、音楽など複数のジャンルがその対象です。創作と同時に発生し、登録等の手続きは不要です。

主に、保護期間は原則として著作者の死後70年まで続きます。私的使用目的の複製は条件付きで認められますが、著作権侵害に対しては10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその併科という厳しい罰則が設けられています。

出典:著作権法 | e-Gov 法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048)

編み物の著作権はどこまで及ぶ?

編み物の著作権は、個人で楽しむ範囲であれば基本的に問題になりません。著作権法では、個人的または家庭内での使用を目的とする複製を「私的使用」として認めているためです。

つまり、以下のケースは著作権侵害にはあたりません。

  • 気に入った編み図を見て同じものを編む
  • SNSで見かけたデザインを真似て編む
  • 偶然見かけた作品とまったく同じ配色で編む

著作権フリーの編み図は活用できる

著作権フリーとして公開されている編み図は、誰でも安心して活用できます。何より、完成品を販売したり、アレンジを加えて新しい作品を作ったりすることも可能である点が大きな特徴です。

「フリー素材」「商用利用可」などと明記されているものは、作者の意図として自由な利用を認めているものです。ただし、著作権フリーと明記されていても、転載や再配布には制限がある場合もあるため、利用規約は必ず確認しましょう。

利益が得られるようになるとNG

編み物の著作権が特に問題となるのは営利目的での使用です。他者の編み図を使って作った作品を販売したり、編み図自体を無断で販売したりする行為は、著作権侵害となります。

近年では、YouTubeなどの動画配信プラットフォームでの収益化も著作権の対象です。他者の編み図を使った製作過程を動画で公開し、広告収入を得る場合も著作権侵害となる可能性があるのです。

大量配布や公開もNG

また、営利目的でなくても、大規模な配布や公開は問題となる可能性があります。著作権のある編み図をSNSで大規模にシェアしたり、無料でも多数の人に配布したりする行為は、著作権者の利益を損なう可能性があるため要注意です。

編み物の著作権侵害にあたる具体例

編み物の著作権侵害は、思いがけないところで発生します。一見問題がなさそうに見えますが、特に注意が必要な具体例として以下のようなケースは要注意です。

  • 著作権のある編み図で作った製作動画をYouTubeで配信
  • 著作権のある編み図を使用して作った作品をフリマアプリで販売
  • SNSでの編み図や完成品の無断シェア
  • 編み図を改変して自作と称する行為

著作権のある編み図で作った製作動画をYouTubeで配信

YouTubeなどの動画配信サイトやSNSにおいて、著作権のある編み図を使用した動画配信は重大な著作権侵害となる可能性があります。動画に広告が付与されて収益が発生する場合は、明確な権利侵害と言えるでしょう。

たとえ「参考にしました」といったクレジットを入れても、著作権者の許可なく編み図を使うことは認められません。また、「収益化していない」「趣味の投稿です」といったただし書きを付けたとしても、著作権侵害の免責にはならないのです。

著作権のある編み図を使用して作った作品をフリマアプリで販売

フリマアプリにおけるハンドメイド作品は人気がありますが、著作権のある編み図を使用して作った作品を販売することは、売り上げの有無にかかわらず著作権侵害となります。編み図の著作権者が持つ「複製権」や「譲渡権」を侵害することになるためです。

特に注意が必要なのは、一点物の手作り品だからという認識で安易に販売してしまうケースです。たとえ、材料費や手間賃程度の価格設定であっても、著作権者の許可なく商用利用することはできません。

また、「非営利目的」「チャリティー販売」といった形態であっても、著作権侵害の対象となります。

SNSでの編み図や完成品の無断シェア

編み図や完成品をSNS上で無断シェア配信する行為も、著作権侵害にあたります。お伝えしている通り、編み図には著作権があるため著作権者の許可なく第三者がSNSに掲載、配信することはできません。

また、営利目的ではないという観点もありますが、SNS上での情報発信は著作権者にのみ認められる行為です。無断での配信は絶対にやめましょう。

編み図を改変して自作と称する行為

著作権のある編み図については、厳密に言えばたとえ自らの手で改編したとしても自作と称することはかないません。もちろん、改編した内容やレベルによっては著作権侵害に当たらないケースも有ります。

しかし、著作権のあるものに意図的に手を加えている時点で一定のリスクはあると認識しておきましょう。

裁判結果が物議…有名な編み物の著作権事件

編み物界隈で大きな話題となったのが、YouTuberによる著作権侵害訴訟です。あえて名前には触れませんが、一連の裁判では自身が考案した編み図や編み方の手順が無断で使用されたとして訴訟となったのです。

しかし、裁判所は主張を認めず、著作権侵害は認められないとの判断を下しました。この判決の背景には、編み物における「創作性」の解釈が大きく関わっています。

共有財産が争点に

編み物の基本的な技法や手順は、長年にわたって確立された「共有財産」とも言える存在です。そのため、特定の編み方や手順だけを取り上げて著作権を主張することは難しいとされています。

この裁判は、編み物コミュニティに大きな波紋を投げかけました。特にSNSやYouTubeで編み物の情報を発信する人にとって、「何をどこまで独自のものとして主張できるのか」という問題を提起することになったのです。

編み物で著作権トラブルを起こさないためには

編み物にまつわる著作権トラブルを避けるためには、以下の3つのポイントについて理解しておくことが重要です。具体的な注意点を見ていきましょう。

  • 私的利用と認められる範囲を正しく理解する
  • キャラクターや特徴的な図案の使用には細心の注意を払う
  • ブランド価値を損なわないことを判断基準にする

私的利用と認められる範囲を正しく理解する

編み物における私的利用とは、自分自身が楽しむために作品を作ることを意味します。例えば、お気に入りのキャラクターを編んで部屋に飾ったり、家族へのプレゼントとして編み物を作ったりすることは、私的利用として認められます。

しかし、InstagramやYouTubeなどのSNSで作品を公開したり、作り方を紹介する動画を配信したりすることは、私的利用の範囲を超えてしまいます。不特定多数の人に向けて情報を発信することになるためです。

キャラクターや図案は要注意とする

編み物のデザインにおいて、シンプルなチェック柄やドット柄だけを使う場合は、著作権侵害のリスクは比較的低いと考えられます。基本的な模様は、だれもが自由に使用できる一般的なデザイン要素だからです。

ただし、この基本的な模様を組み合わせて特徴的なデザインを作り出した場合は話が変わってきます。例えば、特定のブランドを連想させるようなチェック柄の組み合わせや、キャラクターを想起させるようなドット柄の配置は、著作権侵害となる可能性が高いでしょう。

ブランド価値を損なわないことを判断基準にする

編み物作品が「パクリ」なのか「オマージュ」なのかを明確に区別することは、線引きがとても難しい問題です。法律上も明確な基準が設けられていないため、判断に迷うケースが多々あります。

そこで重要になってくるのが、「ブランド価値を損なっていないか」という視点です。例えば、高級ブランドのデザインを模倣して安価な商品を作り出すことは、そのブランドの価値を著しく損なうと言えます。

編み物の図案をパクられた!著作権侵害に対抗するには

自分の大切な編み物作品をパクられたと感じた時、著作権侵害に対抗できるかは、その時の状況判断によります。編み物作品はその性質上、著作権侵害を主張することが難しいです。

例えば、セーターのデザインや編み方のパターンは、多くの場合、伝統的な技法の組み合わせであり、完全なる独自性を証明することはできません。似たようなデザインが偶然生まれることはいくらでもあるでしょう。

もし本当に深刻な被害を受けていると感じる場合は、まず知的財産権に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

編み物の著作権は、作品の創造性を保護する一方で、その主張は容易ではありません。基本的な編み方や技法は長年の共有財産であり、完全なるオリジナリティを証明することは困難だからです。

著作権トラブルを避けるためのポイントは以下のとおりです。

  1. SNSでむやみに発信や販売を行わない
  2. 著作権フリーか分からない編み図は使用しない
  3. キャラクターや特徴的な図案は使わない
  4. 特徴的な図案を使う際は権利者に許可を得る
  5. 無断使用(動画での紹介や言及を含む)むやみに行わない
  6. ブランド価値を損なわないよう留意する

編み物は、伝統と創造性のある素晴らしい趣味です。著作権の基本的な知識を持ちながら、安心して作品作りを楽しんでいきましょうね。

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